一般質問

県立高等学校の再編整備について

昨年8月に教育審議会からの高校再編についての答申を受け、県教育委員会はまず県内5か所で、続いて団体・グループの要請に応じて20か所、説明会を行い、本年1月より29校全ての全日制高校において説明会を開催するとの発表を行いました。
その後、新型コロナ感染者の増加に伴い、説明個所を減らし15か所での説明会を行ってきました。私も何か所か聞きに行かせていただきました。まずは、宮崎教育長、清水教育企画監はじめ、教育委員会の皆さんのご努力をねぎらいたいと思
います。
教育長が自ら足を運び説明を行うという事は今までなかったことだと思います。本当にご苦労様です。
しかし、この高校再編の進め方に対してはやはり一言申し上げなければならないと考え、質問に立たせていただいています。
11月24日の高校再編にかかる臨時文教委員会で、教育長は「8月に答申をいただき、12月に事務局案を出し、3月末までに策定したいと考えており、様々なご意見を伺っているところである。確かに拙速であると感じられることはあるかもしれないが。プログラム(案)については、決して拙速に進めることは考えていない。案を出した時点で皆様からのご意見を頂戴したい。その中で3月までに策定は無理だという話になるかもしれない。まず、教育委員会としてプログラム(案)を見ていただき、様々な意見をいただきながら進めていきたい。プログラム(案)を作ることは是非了解していただきたい。」と述べられています。
ここでは、3月議会までに高校再編の策定は無理だという話になるかもしれないとしながらも、高校再編の計画を進めるプログラム(案)は検討していただきたいという姿勢を崩していませんでした。
さらに、先の12月議会において、坂本議員の質問に「現在いただいたご意見を尊重しながら再編整備実施プログラム(案)を作成しているところです。これを元に、引き続き、県民の皆様への説明や理解に向けた取り組みを行っていきたいと考えています。」と答弁し、再編整備プログラム案を何が何でも出して、これを元に検討していただきたいとしているのです。
ところが、12月14日の文教委員会の説明では、「実施プログラム案の提示時期については、年内の発表を見送り、柔軟に考えてまいりたいと考えている。そのことで生まれた時間を有効に活用し、県議会の方々をはじめ、これまで頂いた様々な意見を参考に、県教育委員会として再編整備の考え方を整理し、それを基に地方別懇談会などを再度実施していきたいと考えていて、そこでいろいろな意見をいただきたいと思う。その上でプログラム(案)につなげていきたいと考える。」と答弁されました。
12月8日の本会議において、今プログラム案を作成していて、それを元に説明や理解に向けた取り組みを行っていくとの答弁が、12月14日の文教委員会では再編整備の考え方を整理し、再度地方別懇談会を実施した後にプログラム案につなげたいとしました。
答弁がこのようにコロコロと変わるという事はいったいどういたことなのか、理解に苦しむものです。
その後、年が明けて改めて説明会を開催しているのですが、2021年2月9日に和歌山市で行われた再編整備にかかる説明会では、「県立高等学校整備計画・実施プログラム(案)の骨子(案)」としたプリントが配られましたが、2月11日の南部高校で配られたプリントでは「これからの高等学校教育を考えるうえでの論点整理」となっています。
1日違いで説明会の目的が変わっているという事はどういうことなのでしょう。
説明会をしながらも変遷をしていっているのは、最初に聞いた方と最後に聞いた方では認識が違ってくるのでは思います。教育委員会の中で、しっかりと議論されているのか、疑問に感じています。
教育委員会としての基本姿勢が問われると思うのですが、教育長に見解を求めたいと思います。

答弁

これからの県立高等学校の在り方につきましては、今後、深刻化する少子化の中で、「本県の高校教育の課題を改善し、教育の質の向上を図る」という点と、「学校をどのように整備していくか」という点の二つの視点で考えております。
昨年までの段階では、答申内容に沿って説明し、県民の皆様から様々なご意見を伺ってまいりました。その中で、再編は必要だが丁寧な対応を求めるとの声が多く寄せられたことから、案の提示に至る環境を整えるため、県教育委員会の基本的な考え方をお示しをする段階を設けることといたしました。
2月の説明会・懇談会では、具体的な案を示すことは控え、意見が分かれる項目について論点を整理しつつ、意見を聞くことを主眼に、それぞれの会場の状況に応じて、丁寧に説明をしてまいりました。
県教育委員会では、広く意見を聞き、検討を重ねながら進めているところであり、県民の理解は着実に進んでいると感じております。今後も、県民の信頼・信用を大切に、取り組んでいきたいと考えております。

再質問

県立高校再編について
答弁をいただきました。県教育委員会は広く意見を聞き、検討を重ねながら進めているところという事であり、県民の理解は着実に進んでいると感じているとのことです。
説明会の様子では和歌山市内と郡市の反応は少し違ったようにも思いますが、「教育委員会、けしからん」といった意見は確かに少なくなったと思います。
ただ、危惧しているのはまだまだ関心の高い一部の皆さんへの説明に限られている点であります。
「本県の高校教育の課題を改善し、教育の質の向上を図る」「学校をどのように整備していくか」という視点を大切に今後とも丁寧に進めていかれるよう要望します。

県立高等学校の再編整備について
今後整備する普通科高校の特色について

教育委員会は、再編整備の基本的な考え方として、今ある32校の県立高校を充実させ、可能な限り存続する。
自宅から通学可能な所に多様性と活力ある高校を確保する。
特色や質の高い学びを保障すると説明されました。
そこでまず、自宅から通学可能な所に多様性と地域の核となる活力ある学校を1校、各地域に確保する点についてお伺いします。
地域の中核となる高校の復権をという事も説明されており、これからの取り組みが注目されますが、現状、生徒は地域の学校というよりは、自分の成績に見合う学校を選んでいるという状況です。
偏差値で輪切りにされた高校をどのようにして地域の核となる高校に変えていけるのか、教育委員会も高校も地域も真剣に考えなければならないと思います。
説明では、特に期待される特色ある教育を実現するために高校を整備していきたいとしていますが、まず、地域の中核高校は、どのような中身の高校を考えているのか。
また、県内に2校、(仮称)特任高校を確保するとしています。
そのような状況の中、この2校を(仮称)特任高校と指定することで高校選別の固定化になるのではと危惧しています。
地域の中核となる高校を復活したいとしているのであれば、高校の序列化につながる(仮称)特任高校というような指定は矛盾するのではと考えます。
教育委員会として地域中核高校の中身と(仮称)特任高校のあり方について、どのような見解なのか、教育長にお聞きします。

答弁

普通科高校についてでございますが、これまで、中学生にとって高校で何を学ぶかが明確でないことによって、偏差値による一面的な高校選択や、それによる高校間格差を招いてきたという見解があります。
また、その高校に合格すること自体が目的となって、入学後に燃えつきたり、目標を見失ったりするなどの弊害を招いてきたという指摘もございます。
がある高校教育を保障するためには、その地域で普通科を希望する全ての生徒が学ぶ学校として、地域の中核となる学校を整備することが必要だと考えております。
一方、工業や商業などの専門教育や特色化した教育等を希望する生徒も少なからずおり、こうした教育を行う様々な高校を展開することも重要だと考えております。
これら、地域の中核となる高校と、全県的な視野でそれぞれの特色を明確にした高校は、中学生が高校でどのような学びを希望するかに対応したものです。中学校のキャリア教育がさらに充実し、希望する学びに基づく進路選択が行われるようになれば、偏差値などに基づく格差や序列の改善が期待できると考えております。
また、役割や使命を明確化したこれらの高校の設置が、多様な学校の存続や、今後の新たな高校教育の充実に繋がるものと考えております。

県立高等学校の再編整備について
特色ある高校再編を進めるための手当てについて

現場の教師は教科指導や生徒指導で一日の大半を費やし、今いる高校をこのように変革していこうと考えている教師はあまりいないと思います。
地域と共にと口では言えても、行動を伴った変革に繋げていくのは並大抵ではありません。
今の偏差値重視の高校を一校一校、特色ある高校に変えていくためには、これからの不断の努力が必要と考えます。
高校再編にあたって、一番危惧しているのは、教育委員会が特色ある高校に再編していくためにどのような手立てを講じていくのかという点であります。
その点についての考え方を教育長にお聞きします。

答弁

再編整備はまさにその具体化であり、鋭意取り組んでいるとこ特色ある高校再編を進めるための手立てでございますが、偏差値など一面的な指標による学校選びから脱却するためには、まず県教育委員会が長期的な展望を明確に示して、生徒が夢や希望をもって人生を切り拓くことや、教師が前向きに取り組む中で資質能力を向上させることを促し、結果として、各学校の魅力化・特色化に繋げていくことが重要でございます。今回の再編整備はまさにその具体化であり、鋭意取り組んでいるところでございます。
また、校長や教員が、県教育委員会の示した方向性に基づいて、最大限のパフォーマンスを発揮することにより、各学校における教育の充実を図ってまいります。
さらに、県内高校に対するふるさと納税制度や地元市町村からの支援などを活用しながら、これまでとは異なる観点で物心両面から学校を支援し、「チーム学校」の機能強化に努めてまいりたいと考えております。

再質問

今後整備する普通科高校の特色と進めるための手立てについてお聞きしました。
教育委員会のいう偏差値など一面的な指標による学校選びから脱却するために、長期的な展望を明確に示すことは大変、画期的な意見だと思います。
高校入試が偏差値で輪切りされ、序列化した高校のあり方を変えていくために、5教科一律の入学者選抜ではない入学者選抜制度を変えていくというのも一つの方法だと思います。
教育委員会は、「役割や使命を明確化した高校の設置が、多様な学校の存続や、今後の新たな高校教育の充実に繋がるものと考えております」との答弁でした。
しかし、教育委員会だけが旗を振っているだけで、実現するものではありません。現場の皆さんだけではなく、地域も含めて特色ある取り組みを真剣に考えていかなければなりません。
答弁では、校長や教員が教育委員会の指し示す方向に基づいて最大限のパフォーマンスを発揮することで、教育の充実を図っていくとのことでした。ある意味それも必要かもしれませんが、私はトップダウンだけではなく、ボトムアップの両輪で取り組まなければならないと思います。
各高校の特徴をしっかりとらえ、皆さんが力を合わせることが必要だと思うからです。
そのような意識がまだまだ醸成されていないように思いますので、時間をかけて、各高校で議論されていくことを期待しています。
私も今後、注目しながら議論したいと思います。

新規高等学校卒業予定者の企業への就職に係る複数応募について

春3月は児童生徒、学生にとって卒業を迎える大切な時期であります。
昨年を思い起こすと、国は新型コロナウィルス感染症対策として、全国の小中学校、高校、特別支援学校に対し、3月2日から春休みまで臨時休校を要請しました。当初は春休みまでとしていたのですが結局は5月半ばまで休校を余儀なくされ、通常の再開となったのは6月下旬でありました。
突然降ってわいたような事態に3月1日に卒業式を予定していた和歌山県の公立高校では卒業式もできず、なんとか卒業証書だけでも手渡したいと予行練習日に手渡したと聞きました。
今となっては、臨時休校の措置が必要だったのか、そのために犠牲になった数々の出来事を思えば、不適切な政策であったと思わずにはいられません。
臨時休校になったため、児童生徒、学生、保護者に強いた生活は今さら言うまでもありません。
6月下旬まで休校となった学校では、夏休みを返上して授業数を確保しなければならなくなりました。
高校3年生にとって、進路を決める大切な夏休みが授業を確保するために使われました。
特に就職を希望する生徒にとって、特に難しい選択を強いたのです。
いつもなら9月中旬に就職募集が解禁されるのですが、昨年は10月中旬とひと月遅れをなりました。どのような企業から応募があるのか、何人の募集があるのか、希望する企業に行けるのか、生徒も短期間で選択しなければならなくなりました。
しかも通常なら6月に応募前サマー企業ガイダンスが開かれるのですが、それも中止となり、生徒の就職活動へのモチベーションもなかなか上がらず就職先を決めるのが難しかったと聞いています。
夏休みは、自分にあった企業を見つけるために会社訪問をしたり、履歴書の書き方や面接の練習に費やしたりするための貴重な時間だったのです。
それが今年に限っては、準備も十分にできないまま就職先を選ばなければなりませんでした。
また今年はコロナの影響もあり、募集企業も2割減という状況で、就職を希望する生徒全員を就職させることができるのかと奮闘されたのではないでしょうか。来年の求人募集はさらに厳しくなるのではと現場の先生方の声であります。
そのようなご苦労もあって、それぞれの進路を選択して巣立っていく生徒を送り出す今年3月の卒業式は、生徒をはじめ、進路指導にご苦労された先生方にとっては、格別な思いをもって迎えられたと思います。
これまで高校では、この高校から何人ほしいと募集する指定校求人と新規卒業者なら誰でも応募できる公開求人を合わせて就職指導をしてきました。
9月16日を解禁日とし、9月30日までの間、その企業に就職したいという生徒を校内で選考し、就職に繋げてきました。
生徒はどこの企業に就職したいか、一社を選んで受験してきました。
その後10月1日からは指定校求人も公開求人もどちらでも一人二社まで選択を可能とし、就職先を決めてきたのです。
この方法は何十年も続けられており、企業と学校の信頼関係を作り上げてきました。募集する企業も学校を信頼して各校に指定校求人を出しており、学校側も生徒の様子を把握し、その子に最も適した企業を選択できるよう努力を重ねてきたのです。
今年の高等学校卒業生の就職にかかる例年にはない苦労をご紹介した上で、今年1月に教育委員会が「新規高等学校卒業予定者の企業への就職に係る複数応募について」ということで校長会に提案した内容についてお聞きしたいと思います。
先ほどから今年の卒業生の進路指導の難しさを合わせ、就職に関しても十分な準備もできなかった現場の先生方や生徒たちの様子をお話しさせていただきました。それ以上にコロナ禍の中、感染症対策をはじめ、学習時間の確保など学校はてんてこ舞いの状況でした。
そんな中、教育委員会の複数応募制の突然の発表に学校関係者はみな一同に驚き、不信を感じています。
就職指導を行っている現場から今のやり方の不備を指摘し、変えていく方がという声があるのであれば、十分に議論し、変えていくのはいいと思います。
しかし、今回のように突然の変更を一方的に押し付けるというやり方は間違っていると思います。
これまで一社にしか応募できなかったのを複数応募できるようにと改正しようとしていますが、複数応募ができる状況となった時、よくできる生徒は何社も内定をいただき、もっとも困難な生徒たちが就職先を見つけられないという事態が想定されます。学区制の全廃の理由も学校選択の自由を保障するという理由でしたが、結果、学力的に大変な子たちが遠いところに通わざる得なくなるといった結果を生みました。
同じような状況が生まれるのではと危惧しています。
また、複数応募を採用している都道府県は秋田県と沖縄県だけと聞いています。複数応募を採用しているにも関わらず、やはり大半の学校は一人一社推薦の方法を採用していると聞きました。大阪府も導入しようとしたようですが、今年の状況をみて中止にしたと聞いています。
近畿では複数応募を採用している府県は見当たりません。和歌山県だけに導入しても連携が取れないのではないでしょうか。
そこで、高校生の就職の現状と複数応募制の経緯について教育長に見解を求めます。

答弁

高校生の就職の現状と今回の導入に至った経緯についてでございます。
現行では、9月中旬の選考解禁日から2週間は、生徒は一社にしか応募できず、それ以降は複数企業に応募することが出来ます。就職希望生徒の約7割は一社募集で内定を得ています。
また、求人には、企業が指定した学校に応募できる人数を定めた指定校求人と、学校や人数を制限しない公開求人があり、指定校求人による就職が主なものとなっています。
指定校求人への応募者決定は、校内選考によります。校内選考は生徒の希望をもとに実施されますが、一回の選考会議でほぼ全てが決定されるので、生徒は校内選考で希望する企業が叶わなければ、その後の就職が不利になると感じ、自身と他の生徒の高校3年間の成績を忖度して、働きたい企業よりも校内選考で選ばれる企業を希望する実態もあります。
キャリア教育、インターンシップ、応募前職場見学などを通して、やりたい仕事、個性を生かせる就業を重視していますが、応募段階では校内選考を通ることが最優先されることもあるといった、校内選考がボトルネックを作りだしています。
結果として、生徒は、内定を得やすいものの希望しない企業に合格してしまうことになり、このことが、早期離職の要因の一つになっていると考えられます。
これ以外の問題点として、企業側が望む人材が校内選考で選ばれていないという問題意識をもたらし、高卒求人に消極的になりがちなことが懸念されています。
今回、理解を得られる企業の求人について、選考解禁日から複数企業の入社試験に応募できる仕組みに変更することで、業選択につなげることが出来るとともに、地域の産業界を担う生徒たちが自らの可能性と適正に向き合い、展望を持った、職若者の育成になると考えています。

再質問

新規卒業者の就職について
制度の改正はプラスもあればマイナスもあります。改正することでマイナスを少なくし、プラスにしたいという事だと思います。しかし、改正するにあたっては、当事者の意見や時期を考えて実施しなければ現場に不安と混乱をもたらすものとなってしまいます。
今回の改正も生徒や企業や高校の先生方の意見をしっかり聞いていただいたのでしょうか。
現場の先生たちからは、教育委員会からの突然の説明であったと聞いています。
生徒の意識はどうでしょう。
7割の生徒が一社応募で内定を得ているとしていますが、一社応募で自分が行きたくない会社を選んでしまったと何人の生徒が思っているのでしょうか。調査はされたのでしょうか。
私は早く就職が決まって、良かったと思っている生徒が多いと思います。
複数応募制は生徒に選択する力があってこその制度だと思います。制度を変える前にするべきことがあるように思います。

教育委員会は複数応募に変更する理由として

教育委員会は複数応募に変更する理由として、離職率を上げられています。
確かに離職率は高いということですが、離職した理由は企業とのミスマッチが大きな原因ではありません。入社したものの最初の条件と合わなかった、会社の人間関係でつまずいた、パワハラにあったといったものが多数を占めています。
高校生の就職に関する情報量は本当に少ないものです。それだけに就職に関しては一社でも多く見学をする、インターンシップを導入する、多くの情報を提供する、などの対策が求められています。
3年生からだけではなく全学年を通してのキャリア教育こそが離職率を下げる手立てと考えます。
離職率の高さを懸念しているのであれば、制度を変えるより、キャリア教育の積み上げが必要と考えます。
このようなことを踏まえると、複数応募制の早急な実施は見直すべきと考えますが、教育委員会の見解を教育長にお聞きします。

答弁

世界観や価値観の構築につなげ、将来の展望を持った若者をキャリア教育については、10年以上前から、小学校・中学校・高等学校それぞれの発達段階に応じたキャリア教育の充実に取り組んでおります。キャリア教育は結果として離職率の改善に役立つことは期待されますが、矮小化された目的のためだけに行われるものではありません。高等学校では、生徒一人一人が、自らの在り方と生き方としっかり向き合い、育てることを最重点として考えています。
先ほど、答弁いたしましたように、これまでの指定校求人と一定期間の一社応募の制度が、キャリア教育の目的と相いれないと考えられるところがありますので、キャリア教育の充実の観点からも、制度の変更が必要と考えます。制度改正については、長年の課題認識に基づくものであるとともに、コロナ禍で企業の求人活動が変化することが予測されるなか、必要なものと考えております。
制度変更に当たっては、議員ご指摘の点も踏まえ、企業の理解を求めながら、生徒や保護者、教職員に過度な不安感を与えないよう、就職指導の拡充など、セーフティネットの充実等を含め、丁寧に進めてまいります。

再質問

キャリア教育について
今年は本当に生徒にとって受難の年でありました。就職だけでなく進学する生徒も大変な思いをしました。
まして、働くことを選択した生徒たちにとって、夏休みが少なかったことで十分な情報収集ができず、大変な思いをしたのです。
教育委員会は、一社応募制度は、キャリア教育と相いれないと考えているようですが、私はそうは思いません。一社応募でも自分の考えをしっかり持って選択できる生徒を育てることが大切なことだと思います。
秋田県、沖縄県で複数応募を導入してみたものの一社応募の企業の方が多いと聞いています。
今回の複数応募の導入は立ち止まり、考え直すべきだと思います。最終的な結論はまだという事ですので、是非関係者各位で十分に論議し結論を急ぐことのないように要望します。
最後に、高校教育では、卒業する全ての生徒の進路を保障していくという姿勢が大切にされなければなりません。そういった姿勢は今後も続けていただきたいと思います。

性的指向や性自認を理由として困難な状況に置かれている人々を支援するための条例等について

セクシャルマイノリティーの皆さんの抱える様々な困難を行政としてどのように取り組んでいくのかといった点からいくつかお聞きしたいと思います。
昨年もセクシャルマイノリティーの存在を訴え、差別と偏見に対して声を上げる運動「レインボーフェスタ」が和歌山城二の丸と勝浦の二か所で開催されました。
このフェスタはセクシャルマイノリティーに対する理解を深めようと開催されていますが、フェスタ自体は大変楽しいものとなっています。ステージでは唄やダンスが披露され、出店で焼き鳥を買って一杯飲みながら楽しむ方もおられ、一日を楽しく過ごせるものとなっています。私も毎年、楽しみにしています。
今さら言うまでもありませんが、セクシャルマイノリティーを表す言葉としてLGBTという言葉がよく用いられます。
Lはレズビアン(女性の同性愛者)Gがゲイ(男性の同性愛者)Bがバイセクシャル(両性愛者)Tがトランスジェンダー(心の性と体の性との不一致)の頭文字から作られた言葉で性的少数者の総称として用いられています。
LGBは性的指向は、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうかを示す概念で異性愛、同性愛、両性愛を指します。
Tは性自認をさし、自分の性をどのように認識しているのか、どのような性のアイデンティティ(性同一性)を自分の感覚として持っているのかを示す概念であり、「心の性」と呼ばれています。
トランスジェンダーは、性同一性障害として医療的なケアーを必要とする方もいれば、自分の身体の性別に違和感を持ちはするものの、特に医療的な治療を必要としない方も含まれています。
このようにセクシャリーティーに関しては、特定の状況に当てはまらない方もおり、多様な類型に分かれています。そのため新しい用語として、SOGI(性的指向及び性自認と)という(sexual orientation and gender identity)ソジという表現が使用され始めています。
ここからは、性的指向及び性自認という言い方が長いので、SOGIと表現いたしますので、よろしくお願いします。
説明が長くなりましたが、人口の8%程度がSOGIと言われており、日本においては様々な困難を強いられ、権利を侵害されています。
SOGIの方への差別や偏見は依然として大きく立ちはだかっています。
日常生活を送る上でも困難な問題がいくつもあります。
例えば、病気になった時の病院の無理解な対応や入院した際の病室を無神経にあてがわれるといった問題もあります。
県立医大での取り組みはどうなっているのでしょうか。医師や看護師向けの啓発、指導、はどのように行われているのでしょうか。
様々な書類の性別欄が必要かどうかの問題もあります。最近は確定申告や選挙はがきが性別欄を削除していますが、さらなる見直しが求められています。
トイレの問題も当事者にとっては切実な問題です。
言い出せばキリがないぐらい様々な問題があると考えますが、そのような事について相談できる窓口の設置も必要な事です。
また、教育・啓発も大変重要だと考えます。
見直さなければならない問題が山積していると思います。一つずつ検討し、改善していかなければならないと思います。
そのためにも、この問題についてのルールと基準を示さなければならないと考えます。
県では、来年度の男女共同参画基本計画の改定にあたり、意識調査を実施しました。拝見いたしましたが、SOGIの項目の調査が見当たりません。
先ほどから申し上げましたように、SOGIの皆さんが直面している問題を男女という括りにしますと、対策が見落とされてしまうと考えます。
まず、SOGIに対して県民がどのような意識を持っているのか調査をする必要があると考えます。
そのうえで、男女共同参画条例とするか新たな条例とするかも含め、SOGIの問題の見直しをしていかなければならないと思いますが、知事に見解をお聞きします。

答弁

性的指向や性自認を理由に困難な状況に置かれている人々に対しては、いかなる差別も決してあってはならないものでありまして、そのためには、困難を取り除いていかなければならない、という点については議員と全く同感であります。
そのために、色々な御提案がありましたけれども、ちょっと通告というか前に質問の内容ですよと聞いていたところに従ってお答え申し上げます。
すなわち、条例を一つ作ったらどうかという風に言われてますということでありましたので、それについてお答えしたいと思います。
性的指向や性自認を理由に困難な状況に置かれている人々の人権を守るためには、県民が多様な性の在り方を理解し、尊重することが、まずは大事であると考えます。
そのために条例を、ということだという風に勝手に理解をいたしまして、条例ということであるとすれば、実は条例が二つございまして、一つは和歌山県人権尊重の社会づくり条例というのがあり、これに基づきまして人権施策基本方針いうのが定まっております。
LGBTや性同一性障害のある人等の人権を守るために、これらの方々に関する多様な性の在り方について県民の正しい理解を深め、誰もが自ら、自分らしく生きていける社会を実現する取組を推進しなきゃいけない、ということが明記されているわけであります。
もう一つ和歌山県男女共同参画推進条例があります。これに基づきまして、男女共同参画基本計画というのが何度も作られております。現在作られている計画でも、もちろん次のもそうしたいと思いますけれども、性的指向や性自認を理由として困難な状況に置かれている人々が抱える問題の解消に向けた施策を盛り込む方向、盛り込まなきゃいけないということでですね、検討を進めているところであります。
条例とか計画にですね、謳えばいいというもんではないと思うんです。人権を守るためにはどのような政策手段が一番効果的かということを、不断に、いつも考えておかなければならない、ということだと思います。
まずは、県民意識の把握にも努めなきゃいけませんが、実務的にですね、問題のあるところはどこじゃ、ということを見つけてですね、今申し上げましたような我が県として規範を決めているわけですから、その規範に沿ったような形で問題のあるところを見つけて直していかなきゃいけない、そういうことをですね、一生懸命やっていきたい。その上でですね、必要があれば別途の条例もある、ありうるかもしれないな、とそんな風に思っております。

再質問

性的指向や性自認の方々を支援するために性的指向や性自認という言葉もなかなか分かりにくい言葉です。まだまだ、県民の皆さんが多様な性のあり方を理解しているとは言いにくい社会だと思います。
それだからこそ、県としてしっかり取り組んでいただきたい。
男女共同参画基本計画には解消に向けた施策を盛り込む方向で検討していただけるという事ですのでよろしくお願いします。
条例や計画に謳っていれば良いというものではないのは、もちろんです。
条例や計画は、差別をなくしていくという一つの手段であります。
そのためにも、県の言われているように一番効果的な政策手段を考え、実行していただけるよう要望します。
今後の条例についても前向きに研究し、実現されるよう強く要望します。

同性パートナーシップ制度導入について

2015年、東京都渋谷区から始まった同性パートナーシップを自治体が認める動きが広まっています。
渋谷区と認定特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティーが共同で実施した「全国パートナーシップ制度共同調査」第4回調査結果によると、現在74府県市区町でパートナーシップ制度が導入されており、人口カバー率2021年1月8日時点で33.4%です。交付件数は2020年12月31日時点1516組であります。
2021年1月8日スタートした明石市のパートナーシップ・ファミリーシップ制度はできたてほやほやでありますが画期的な施策であります。
明石市のパートナーシップ・ファミリーパートナーシップは、同性カップルに限りません。異性カップルであっても制度を利用することができるようになっています。結婚しても別姓でいたいカップルや高齢者カップルで遺産相続の問題があり結婚には反対があるといった場合も適用されるのです。
そもそもパートナーシップ制度は法律上の婚姻とは異なるため、届け出をしても法律に基づく権利・義務は発生しませんが、実質的な効果を伴うよう環境を整備し、その効果を高めるための取り組みが行えるようになります。
例えば県営住宅に入居したいと思っても、現行では申込すらできません。入居の要件が世帯単位であることから同性パートナーは認めてもらえません。パートナーシップ制があれば入居条例の変更だけで申し込みをすることができます。
また、病気になった時でも親族や家族と認めていただけなければ、家族として当然教えていただけることがカヤの外に置かれるという事になってしまいます。病院で家族として扱ってもらう意味は大きいと思います。
企業によっても同性のパートナーを配偶者として認めるよう社内規定を改定する動きも見られます。まだ大手の数社ではありますが、同性のパートナーにも福利厚生を運用しようとしています。これもパートナ―シップ制があれば容易に証明することができるのです。
同性のパートナーが認められる社会は、SOGIの自分の生き方を肯定できる社会、自尊感情をもって生きていくことのできる社会であると思います。
同性であっても異性であっても全ての県民が自分自身を大切に自分らしく生き、互いを認め合える社会を作っていくための具体的な一つの道筋がパートナーシップ制度です。
パートナーシップ制度は差別をなくしていく大きな目標の一つの方策であります。
1月19日の記者会見で知事はこのパートナーシップについての考え方をこのように述べられています。
「そんなに制度を作ってというのは、あんまり熱心に推進したいとは思っていないのですが、差別をしてはいけないというのは明らかで、そういう意味では、そういう人がいらっしゃって懸命に生きようとしているのは、応援して差し上げたいと思います。」とおっしゃっています。
差別をしてはいけない、応援しようと思っておられるのであれば、和歌山県でも率先してパートナーシップ制度を導入すべきであると考えます。
最近のコロナ条例や部落差別解消条例など県は差別を許さない姿勢を示されてきました。SOGIの差別解消のため制度を整えていく必要があると思います。
その点についての知事の考えをお聞きします。

答弁

同性同士がお互いを人生のパートナーとすることを宣誓するということを公的に証明するというのがですね、パートナーシップ宣誓制度ということだと理解して申し上げたいと思います。
そのことについてお尋ねがもし仮にあるとすれば、前に記者会見で申し上げたような見解を今でも持っています。
なぜならば、これを自らが宣言した、宣言するということを公的機関が証明してほしい、それによって生ずる法律関係の変化が整備されていないと自己満足で終わってしまうと私は思うわけであります。
ならば整備しようとするとこれは家族関係の在り方という民法の最も難しいところに突入してしまうことになって、なかなか県だけで、あるいは国もそうかもしれませんが、結論が出ない話になるんじゃないかなという風に思うわけです。
しかし現実にそれをお選びになって、そういう生き方をお選びになって、懸命に生きておられるような人がいろんな制度によって不都合を感じておられて、結果的にはそれは差別じゃないかなと思うようなことがあるとすれば、それをお直ししていくのがですね、私たちに課せられた課題ではないか、そんな風に思うわけです。それがあの記者会見で申し上げた答弁なんですが、今でもその考えは変わっておりません。
具体的に言うとですね、やっぱりあると思います。例えばお挙げになった県営住宅の入居、これなんかはですね、やっぱり時代に合わせて同性の方なんかも、本当に事実上のですね、自分たちがパートナーと思われるようなものであるとすれば、御入居を認めて差し上げたらいいんじゃないかなという風に私は思います。ただそういう制度というのは色々こうあちこちから光を当てて議論をしていかないといけないので、今、実は事務的にそういう問題を色々洗い出して改善点を探っているところでございます。
その上でですね、やっぱりこれはこんな制度がないと、ものにならんぞというようなことが見つかってくればですね、それは採用することに躊躇するところはございません。

再質問

パートナーシップ制について
ご答弁ありがとうございました。
知事が言うように、差別を解消するためには、条例や計画に明記されていれば良いというものではないのはもちろんです。
その上で、知事は、当事者が実際どのような状況で不利益な扱いを受けているかを把握し、どのような対応がなされるべきか、個別的に検討することが重要であると答弁されています。
私が先ほどから住宅を借りる時の不合理さや、病気になった時の不当な扱い等具体的な質問をしています。
そのことは個々の問題ではなく、SOGIの皆さんが往々にして直面している問題であり、差別の問題なのです。
それを解消するために一つの方法としてパートナーシップ制度があり、1516組もの方々が利用しているよと申し上げています。
パートナーシップ制度は制度としては不十分なものだと思います。法的保護もありません。しかし、パートナーシップ制度でお互いがパートナーであると社会に認められ、この社会で生きていっていいのだという安心感・充足感・自尊感情は何物にも代えがたいものなのです。
知事は、同性同士のパートナーであるという理由だけで生きづらさを感じたり、不利益な扱いを受けることがないようにしていかなければならないと言われているわけですから、パートナーシップ制度について、もう一度しっかり検討していただき、導入に向けて前向きに取り組んでいただきたいと強く要望します。
答弁にあるように、まずは状況をしっかり把握され、生きづらさにつながるような制度がないか点検していただき、改善が必要なものがあれば速やかに対応していただくようお願いします。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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